タイムマシンを作るはなし その3
 惑星ベジータから27光年離れた場所に到着した観測ロケットは、そこで撮影された映像をブルマのラボにあるコンピュータに正確に送信していた。
 画面中央にある、赤い小さな惑星。
 その脇に、巨大な光球が唐突に現れ、赤い星はあっという間にそれに飲み込まれた。
 光は消え、赤い星も消えた。跡形もなく。

「もう一度、見せろ」

 ベジータの淡々とした要求に抗いようがなく、ブルマは黙って再生ボタンを押し続けるしかなかった。
 惑星ベジータが消える、一瞬の映像。
 もう百回は見ただろうか、そう感じるほど長い時間の後、ベジータは立ち上がってラボを出た。
 どっと汗が噴き出し、ブルマはその場に突っ伏した。
「‥‥ごめんなさい」
 撮るべきじゃなかった。見せるべきじゃなかった。
 ブルマは後悔に咽び泣いた。

 しかし、ベジータの心は凪いでいた。
 惑星ベジータは隕石の衝突などではなく、フリーザの手によって消滅させられた。知らされた話は事実だった。
 あの一撃で、惑星ベジータは滅びた。
 サイヤ人を絶滅させるほど、フリーザの力は強大だった。
 自分は何も知らず、戦いの場を与えられた悦びに、さながら骨を与えられてシッポをふる犬のように付き従っていたのだ。
 なんとも、滑稽な姿だったろうな。
 怒りが沸いてくる。腹の底から、ふつふつと。
 なのに、心は不思議なほど穏やかだ。
 全ては、己の弱さと、無知が招いたことだ。
 フリーザが許せないのではない。
 自分が弱いことが許せない。

 力が欲しい。
 
 俺は、サイヤ人なんだろう?

 俺は、サイヤ人なんだろう?

 俺は、―― 

 ――プツン、と何かがはじけた。

 
 

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