タイムマシンを作るはなし その2 |
衝撃の映像が記録されたコンピュータを抱えて、ブルマはパオズ山を訪れていた。 もしかしたら、悟空は、自分の故郷の最期を知りたがるのではないか、と思って。 だが、ブルマの話を聞いて、悟空は困ったように頭を掻いた。 「‥‥すまねぇ。オラ、惑星ベジータって言われても、何も覚えちゃいねえ」 父がいたかもしれない、母がいたかもしれない。 けれど、悟空にとって家族は、悟飯じいちゃんただ一人であり、顔も名前も知らない家族であっただろう人間のことに思いを馳せようがなかった。 あまりにあっけらかんとした物言いに、いかにも悟空らしい、とブルマは笑った。 「それさ、‥‥ベジータに見せた方がいいんじゃねえか?」 「ベジータに?」 それこそ、あり得ない、とブルマは言った。 肉親であろうと殺し合うサイヤ人そのもののあの男が、生まれた惑星に何の感慨を抱くというのか。 「『くだらん』って一蹴されるのがオチよね」 常々、地球人の軟弱な愛だの情だのいう感情をくだらないと言っているあの男にコレを見せて、また同じ感想を聞かされるのだろうと、容易に想像が付く。 「そうかな。よく分かんねえけどよ、見届けるギムってのが、あるんじゃねえかなあ」 「義務、ねえ」 あんたも難しい言葉、知ってるじゃない。茶化しながらもブルマは、そうかもしれないと思った。 「ま、聞いてみるわ」 軽い気持で、ブルマは言った。 軽い気持だった。 だから、「見る?」と軽く聞いて、ベジータが真剣な顔で「見せろ」と言ったとき、後悔した。 ブルマにとってベジータは、戦闘マニアで、自分を痛めつけるのが趣味の変態で、わがままな居候で、戦い以外の全てに無関心の冷血漢だった。 サイヤ人の王子。 サイヤ人の王子であることを、悟空は覚えていた。 この男が、サイヤ人であることに、どれだけ執着しているか。 ベジータは、惑星ベジータの名を有することを許された天才であり、全サイヤ人を統べる王家の後継者であり、ひたすら戦うことを好むサイヤ人だ。 誰よりも、サイヤ人であることを強く望み、唯一のサイヤ人であることを誇りに思っている‥‥だからこそ、超サイヤ人になった悟空を許せずにいる。 ベジータはサイヤ人だ。 ブルマは、己が無神経だと思い知らされた。 ←もどる つづく→ |
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