タイムマシンを作るはなし
 太陽の光は、今から8分前に発せられた光だってのは知ってるわよね?
 地球から太陽までの距離は、光の速さで8分かかる、だから、アタシ達が見ている太陽の光は、今から8分前に太陽から発せられた光、ってワケ。
 じゃあ例えば、今この瞬間、太陽が爆発したとするわよ? でもその爆発の瞬間の映像を、アタシ達が目にするのは、8分後なワケ。
 そこでアタシが、光の速さ×8分を一瞬で移動できる装置を使って太陽の真正面まで移動したとしたら。
 ほらね、アタシは地球から8分後の未来を見ることが出来るのよ。
 なら、過去に行くにはどうすればいいかしら。8時間前、8日前、、8年前へ行こうと思ったら。
 同じような装置を使って、太陽から8時間後、8日後、8年後の距離へ移動するの。
 その場所へ先回りすることで、8時間前の、8日前の、8年前の太陽を見ることが出来るのよ。

 かつて地球でも、タイムマシンは研究されていた。
 聞いた話では、東の都近くに住む時空工学博士は政府の依頼で研究をしていたという。もっとも、その研究は途中で事故があり途絶えてしまったようだけれど。
 ただし、それは四半世紀近く前の話だ。
 科学の進歩は、決して等速上昇運動ではない。あるブレイクスルーが発生すれば、そこで急角度に変化する。
 アタシにとってそれは、宇宙――神様の宇宙船、ナメック星人の技術との出会いだった。
 木星まで一瞬で移動する能力を有する宇宙船。
 更に、この宇宙船ですら34日かかる距離を6日で移動させた、サイヤ人の宇宙船。光を置き去りにする速度を出す宇宙船、

 そして何よりも、未来から来た少年。

 タイムマシンは存在する。
 カプセルコーポレーションのジャケットを着た少年が証明した。
 タイムマシンは、カプセルコーポレーションから生み出されるに違いない!

 ブルマの研究室には、今日も次々とデータが送られてきていた。
 タイムマシンが実在可能と断言できるようになってから、半年が過ぎた。
 あれから次々と、ブルマは観測ロケットをとばしていた。
 8時間前の太陽が観測できる位置へ。
 8日前の太陽が観測できる位置へ。。
 ブルマの仮説は正しく、それらのデータは地球で見る8分前の太陽のデータと、同一の観測結果を見せた。
 8年前、80年前を観測することも可能だ‥‥ただ惜しむらくは、検証すべき8年前、80年前の観測データを自分は持っていない。
 データが正しいか正しくないかは分からない。けれど、80年前はきっとこうだったのだ、と思いを巡らせるロマンチックは味わうことが出来る。

 ふと、ブルマは思いついた。

 今は既に消えてしまった惑星ベジータ。

 けれど、それが『存在していた』時代が観測できるポイントが、宇宙のどこかに存在しているはずなのだ。
 四半世紀近く前に滅びてしまったひとつの惑星。
 その四半世紀よりも先の観測ポイントに、ロケットをとばせば、惑星ベジータの姿を見ることが出来るのだ。

 彼女の好奇心は抑えられなかった。
 今は存在しない惑星の、存在していた姿を捉えることを。
 そして彼女は。
 見てしまった。

 ひとつの惑星が、巨大な火の玉の衝突で砕け散ってしまった、その瞬間を。

 






→つづく
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